2011年1月9日日曜日

Crash Dragon! =Prorogue





 ソーシャル・バーチャルリアリティ・ネットワーキングサービス(通称SVN)とは


社会的ネットワークをインターネット上で行うサービス(通称SNS)の次世代的システムを表す言葉。
近年、大手ゲーム会社の協力により、自らの分身(通称アバター)なる存在をネットワーク上に構築させその中へ人間の意識を転送させるシステムを開発。しかし使用するには高額なる料金を支払わなければならない為、金持ちだけが使用できる特別な存在だった。
だが技術の著しい向上・発展によってこのシステムはより一般化し各家庭に普及。オンラインゲームやコミュニティなどに活用され、今や街の広場に転送装置が設置されるほどになった。
しかし、この高度な技術を趣味の領域で終わらせてはならないと考えた人間が少なからず存在した。
そこで彼らはインターネットに蔓延るSNSに目を付けた。
画面を通じて情報を交換したり、仲良くなったり、金銭のやり取りをしたりする画期的なサービスだが、そこには取り払うことが出来ない画面という名の壁がある。
相手の顔や表情を見ずに交流するのは心のどこかで不安が残るものだ。
だが、このSVNならそんな問題も簡単に取り除けるのだ。
互いに交流し触れ合い、そしてそれぞれが望むやり取りを行う。例えアバター同士であっても、高度な技術によって構成されている為使用者の内面を如実に表すことが可能だ。
外側は違かろうとも中身は同じ。よって生身の人間と交流しているのと等しいのだ。






現在、SVNを使用している人々は全国民の七割を超えており、現在も増え続けている。全ての人間がSVNの素晴らしさに触れる日は近いだろう。











 俺はしばらくの間、大手検索サイトのトップページに表示された特集記事と睨めっこしていた。


……何がSVNだ。結局はSNSと一緒じゃないか。
生身の人間と出会い交流するのが、傷つくのが怖い軟弱な人間達が集まる場所。それこそがネットワーク。しかし今こうしてネットを開く俺もそこに含まれているのだ。マイナスな気分になってキーボードに頭を伏せる。
刹那、中学時代から愛用している型落ちのPCが、今にも自壊しそうな音を立て始めてしまった為慌ててIEを閉じる。……最近のニュース記事は容量がいちいちデカイ。さっさと新型PCに買いかえろとか言われているような気がして余計に腹が立つ。絶対に買い替えてやらないからな。


パソコンの前から立ち上がり、いつもの学ランに着替える。そういえば近々衣替えだったかもしれないが……まあいいか。
壁にかかった黒い鞄を手に取り、筆記用具とノートだけ入れて自室を出る。
リビングを通り狭いキッチンへ走り、買い溜めてあったやきそばパンやホットドッグやらを鞄の残ったスペースに入るだけ詰める。早弁用と昼飯用、そして帰りの分。これだけあれば……うん、まあ、何とかなるだろう。


壁に掛けられた時計はもう出発時間を示していた。適当に菓子パンを口の中へ抛り込むと玄関へダッシュし扉を開く。ここはエレベーターもないボロアパートの七階な為階段を降りるのに相当な時間が掛かる。
俺が姿勢を整えたと同時に大きく開いていた扉がガシャンと閉まり、オートロックを掛ける音が響いた。そんな機能よりもまずエレベーターを設置して欲しかったなあといつものように思いながら、俺は全速力で駆け出した。

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